出産してすぐは骨盤内の筋肉の疲労がはげしく、おしっこは出すのも止めるのも困難になります。
しばらく安静にすると体と骨盤内の筋肉が回復し、排尿の感覚ももどってきます。
しかし、産後いつまでたっても正常な排尿の感覚が戻らないという方が増えてきているようです。
今回は、実際の事例を踏まえて産後の長引く尿漏れに困っている方へ早期に改善する方法をご紹介します。
産後の尿漏れが治らない…
そもそも尿漏れとは、くしゃみや咳込んだりとお腹に急に力を入れたときに思わずおしっこが出てしまう症状です。 軽い症状だとほんの少しにじむ程度から、ひどいと大量に出てしまうこともあるようで、最近では年配だけでではなく産後の女性を中心に若年層にも増えています。産後の尿漏れはいつまでなら正常?
産後の尿漏れは個人差がありますが、「およそ1年以内」に改善できれば正常ではないかと考えています。 そもそも女性は、膀胱や尿道が腹圧(お腹の筋肉)の影響を受けやすいので、年配になると腹圧の低下から尿漏れが起きることが多くなるようです。 では産後の若年層の女性がなぜ尿漏れするのかについては、医学的な根拠はありませんが、カイロプラクティックの施術をしていると、出産後1か月は特に骨盤内の筋肉が疲労していることがわかります。 その結果、一時的に腹圧が低下して尿漏れがあるのではないかと考えています。 ただし、産後1年以上たっても尿漏れがある場合には、骨盤を支える筋肉が弱ったままの可能性があります。 また、産後1年以内でも長期に大量の尿漏れがあるなら、内臓の病気の可能性が無いか泌尿器科などの病院を受診されることをおすすめしています。なぜ出産後は尿漏れになりやすいのか
なぜ出産後は尿漏れが起きやすいかというと、骨盤底筋群という筋肉が関連しています。
この筋肉が出産によって弱っているために、一時的に膀胱や尿道を支えることができなくなっているのです。
上の図にあるように、横から見ると骨盤底筋は手の平を丸くしたような形で「膀胱」「子宮」「直腸」を支えています。
骨盤底筋の後ろは尾骨、前では恥骨にぶら下がるように付いていますので、その働きには恥骨と尾骨が影響してきます。
また、妊娠中に大きくなった子宮を赤ちゃんごと支えている筋肉は骨盤底筋群なので、ほとんどの人は産後しばらく疲労で弱りゆるんだままなのです。
骨盤底筋群は膀胱を支えているだけでなく、出ている途中のおしっこを止めたりするときにも使われています。
なお、昔の女性は骨盤底筋群が非常に発達していたため月経血も漏れることがなく、排尿の時にゆるませて排出していたそうです。
また、骨盤は先ほどの「尾骨」をはじめ、「寛骨(坐骨・腸骨・恥骨)」「仙骨」で構成されています。
上の図は正面から見た骨盤です。
- 寛骨 →腸骨、恥骨、坐骨からなる。 【構成】 腸骨(蝶の左右の羽のような部分) 恥骨(正面でへその下辺り) 坐骨(座ったときに床につくお尻の部分)
- 仙骨 →神経の穴がたくさん開いていて腰骨の下にある。
- 尾骨 →仙骨の下に付いている小さな骨
出産時には特に産道を確保するため、骨盤はばらばらになるかのように関節部分がゆるみます。
骨盤を支えているのは周りの筋肉ですが、骨盤底筋群など産後弱ってゆるんでいる状況では骨盤を支えきれませんので、産後に動き回らない方がいいというのはここからきているのです。
さて、実際に当カイロプラクティック整体院で、産後の尿漏れを早期に解消された事例がありますのでご紹介します。
実際の尿漏れ症状を解消した事例
尿漏れの症状をお持ちの患者さんが来院された際に、実際には産後の骨盤矯正とおすすめのエクササイズをやってもらうことで、来院2回目で尿漏れが改善されていました。 どのような内容だったのかご紹介します。産後の骨盤矯正で来院、尿漏れも
患者さんの女性は30代、産後1か月経過後に、産後のケア目的で当院の産後骨盤矯正コースにご予約いただいていました。
自覚されている症状は尿漏れと、腰の下部分(仙骨)に痛みが少しあるという程度で、尿漏れも咳やクシャミのときに漏れてしまう程度でした。
当カイロプラクティック整体院は初めて来院されましたが、特に尿漏れ対策にという訳ではなく産後の骨盤矯正を目的に来院されたとのことでした。
尿漏れ症状の検査結果
どのような症状で来院されたとしてもまずは全身の、整形学検査・筋力検査・カイロプラクティック検査を行います。 結果、この患者さんは以下の異常が認められました。- 太腿の筋肉(大腿四頭筋)が弱っていること。
- 骨盤の一部である恥骨が外側にゆがんでいること。
- 骨盤の一部である仙骨に異常反応があること。
- 仙骨の上に乗っている腰の骨(腰椎5番)に異常反応があること。
処置と尿漏れ改善までの経過
初回の処置ではカイロプラクティック独自のテクニックであるアクティベーターメソッドで骨盤全体と腰の骨を矯正し、症状に合わせて手技によってもゆがんだ恥骨を調整しています。
また、産後の方に必ずエクササイズをご自宅でやっていただくようお願いしました。 ※産後エクササイズのやり方は後述します。
アクティベーターメソッドは周辺に影響を与えにくく繊細な矯正が可能ですので、今回のような弱ってゆるんでいる箇所への施術に適しています。
※アクティベーターメソッドについて詳しくはこのページの中ほど→ ウェルネスカイロプラクティック
2回目の来院で尿漏れが解消していた
1回目の施術から1週間ほど様子を見ていただき2回目に来院されたとき、尿漏れの症状は解消されていました。 ということは、この患者さんの尿漏れの直接の原因には、骨盤の一部である恥骨のゆがみが大きく関連していたと思われます。 しかし2回目の検査結果ではまだ恥骨と腰の骨(腰椎5番)に若干のエラーが出ていましたので、再度矯正し、さらに回復を促進させるよう腰回りのリンパ流しも併せて処置しました。3日目の来院では骨盤のゆがみも解消
さらに1週間後の3回目の来院では尿漏れは再発もしておらず、検査でもゆがみが認められませんでしたので、出ていた尿漏れや歪みなどの症状に必要な処置は2回で完了していました。 なお、困られていた症状は解消しましたので、以降は当初の目的である産後骨盤矯正コースで月に1回程度来院されており、尿漏れの再発もなかったようです。産後の尿漏れ早期改善には骨盤矯正とエクササイズ
実際の尿漏れ症状が2回の来院という早期で解消するのには、骨盤矯正と産後エクササイズが決め手だったといえます。
しかし、骨盤矯正と産後エクササイズは何でも良いかというとそうではありません。
骨盤矯正にはカイロプラクティックのテクニックだけでなく様々な種類がありますが、症状の原因を正確に突き止めることができ、さらに適切な処置ができないと尿漏れなど特定の症状に対する改善は見込めません。
※産後骨盤について詳しいページはこちら→産後骨盤
また、産後のエクササイズは無料動画などでもたくさんありますが、目の前の症状に対して有効なエクササイズを正しく選ぶのは、これもまた難しいかもしれません。
痛みがある場合などは、適した産後エクササイズややらない方が良い場合など悪化してしまう可能性もありますので注意が必要です。
尿漏れ対策トレーニングのやり方
さて、当整体院に産後骨盤矯正で来院される患者さんにおすすめしている産後エクササイズで主なものを3つご紹介します。尿漏れの改善予防に役立つ筋肉を鍛えるエクササイズ
このエクササイズは、「ケーゲル体操」とも呼ばれ、膀胱や子宮、直腸を直接支える骨盤底筋群という筋肉を鍛える目的で行います。- 仰向けで寝て両膝を立て、足は肩幅くらいに開きます。
- 息を吐くなどしてお腹の力を一旦抜きます。
- 肛門と膣を締めるようにゆっくりと力を入れて5秒キープします。
- 5秒キープ→脱力を5回繰り返します。
- さらに肛門と膣を早いテンポで締めたり脱力したりを5回繰り返します。
- 4と5で1セットとし、最低でも3セットを朝晩に行います。
骨盤が安定するための大殿筋エクササイズ
骨盤と股関節をつなぐ大きな筋肉を鍛える目的です。- 仰向けで寝て両膝を立て、足は肩幅くらいに開きます。
- 腕は体の横で、手の平は床を向きます。
- ゆっくりとお尻・腰・背中の順に持ち上げます。
- 反らし過ぎないようお腹が真っすぐになる位で10秒キープします。
- ゆっくりと背中・腰・お尻の順で床に下ろします。
- 3から5を3~10セットほど行います。
下腹ポッコリ防止、お腹の皮膚が戻る下地を作るエクササイズ
下部腹筋、大殿筋エクササイズで、下腹がポッコリと出るのを防止するのと妊娠中に大きくなったお腹の皮膚が戻るよう下地を作る目的です。- 仰向けで寝て片膝を立てます。
- 立てた膝を深く曲げて、さらにお腹に引き寄せます。 反対の足は床に付けた状態です。
- 曲げた方の膝を伸ばしながら、反対の膝を立てて左右入れ替えます。
- 2と3を2秒のペースで10回を1セットとし、3~5セット行います。
- 余裕が出てきたら、伸ばした足のかかとを床から浮かせて行います。