今回の事例で膝の痛みを改善した患者さんは、西宮市在住の産後4か月の女性です。
産後の体のゆるみやすさによって、ほんのささいな動きのクセが膝のゆがみを作り痛みを起こしていたと思われる事例です。
あぐらの姿勢での授乳が膝の痛みを起こしていた?
この産後の患者さんのささいな動きのクセとは、あぐらをかいて授乳する際に、膝より下の足(下腿)に肘をついて赤ちゃんを支えるというものでした。 ※画像はイメージで、肘をついていないあぐらの姿勢です。 産後のあぐらで授乳は珍しくありませんが、この場合は肘をつく場所が問題で、膝に2重に負担がかかるものになってしまっていました。 どういうことかというと、あぐらをかいた状態の膝はてこの原理で床方面に引っ張られています。 そこにさらに下腿に肘をついたことで、上半身の体重と赤ちゃんの重さで膝を床方面に押し付けることになり、足はまっすぐなまま膝だけ外側へと向かされる状態だった訳です。 しかも、産後というゆるみやすい体だったことから、負担のかかった膝は普段よりも早く簡単にゆがんだと考えられます。 ※産前産後にはリラキシンという女性ホルモンが多く分泌されるために体中がゆるむ状態になりやすくなります。かがんだ状態から立ち上がるときに膝が痛む
膝の痛みはご来院される2週間前に始まって徐々に強く痛むようになり、痛む場所は左右両方の膝の皿の裏(膝の中心部分)で、かがんだ状態から立ち上がるのが特に痛むとのことでした。 かがんだ状態からの立ち上がりとは、膝の角度という視点からみると負担は大きめになります。 膝の角度を実際の動きで表してみると下のようになり、角度が大きいほど膝の負担が増し、症状が出やすくなります。- 歩行 → 60度前後
- 椅子からの立ち上がり → 90度前後
- かがんだ状態からの立ち上がり → 120度前後
- 正座 → 150度前後
検査結果は膝のゆがみ、骨や筋肉には問題なし
問診の後に整形学検査・筋力検査・カイロプラクティック検査とそれぞれおこない、出てきた結果は両膝が外向きにゆがんでいるけど膝の骨や筋力、靭帯には問題はないというものです。 整形学検査では筋肉や骨の機能をみますが、膝自体の骨や靭帯などに異常はありませんでした。 筋力検査では膝に関連の深い筋肉に異常がないかをみますが、これも問題はなく、弱っていたり炎症のある筋肉はありませんでした。 カイロプラクティック検査では、体の機能面・神経系・筋骨格系をみます。 異常が認められたのは膝のゆがみ(膝外方変位)・骨盤のゆがみ(両坐骨外方変位、右仙腸関節後下方変位、腰椎4番の左回線変位)、骨盤のゆがみに関連すると思われる首のゆがみ(頸椎2番の右回旋変位)でした。 一般的に産後の体はゆるみやすいことから骨盤はほぼゆがんでいて、この患者さんもゆがみがあったのですが、元々ゆがんでいたのか膝のゆがみからなのかは判断しにくいところです。 なお、骨盤がゆがんでいたために、骨盤の上に乗っている首の骨もゆがんだとも考えられます。1回目の処置で膝の痛みレベルは10から2へと減った
初回の処置では、検査結果で異常な反応のあった箇所にカイロプラクティックのアクティベーターメソッドという施術で神経・骨・筋肉を正しい方向に矯正し、さらに両膝の動きを助けるキネシオテーピングをおこなった結果、膝の痛みは右膝は10から3に、左膝は10から2に減っていました。 ※痛みのレベルは問診時に1から10の数字で表していただき、施術後に痛みの変化を数字でお聞きしています。アクティベーターメソッドとは
アクティベーターメソッドとはカイロプラクティックの独自の施術方法で、パチン!と音が鳴る専用器具を使い、神経にわずかな振動刺激を与えて神経の機能を正しく整えるものです。 これはポキポキいわすようなカイロプラクティックの施術に比べると矯正力は小さいものですが、今回のようにゆるみやすい産後の方や初めて施術を受けられる方へは、優しめのこの矯正をまずおこなうことが多いです。 ※アクティベーターメソッドについて詳しくはこちらの記事にも書いています。 『パチン!』の実力① 『パチン!』の実力②キネシオテーピングとは
キネシオテーピングとは、単純に患部を固定する目的のテーピングとは全く違うもので、筋肉の動きに沿ってテーピングすることで負担を減らし患部を助ける目的と、テーピング箇所の強化にもなるのでそれ以上の悪化を防ぎます。 ※キネシオテーピングについて詳しくはこちらの記事にも書いています。 キネシオロジーテープの効果① キネシオロジーテープの効果②2回目の処置で膝の痛みは0になった
2回目の処置にご来院されたのは1週間後で、1回目の処置で膝の痛みのレベルは10から2または3へと減りましたが、まだ残っている状態でした。 2回目の来院では痛みのレベルは両膝とも5になっており、再度おこなった検査結果では1回目に正しく矯正した膝がわずかに外向きに戻っていました。 2回目の検査でも同様の結果になったことと、筋力には問題がなかったことから、アクティベーターメソッドよりも矯正力の強いディバーシファイドテクニックというカイロプラクティックの施術で矯正をかけたところ、その場で痛みレベルは0になっていました。 さらに1週間後に3回目の来院をされたときには、膝の痛みは0のまま全く出ていない状態でしたので、予防やメンテナンス重視の産後の骨盤矯正コースへ切り替えて、月に1度ほど定期的に通っていただいています。今後の膝の痛み再発予防の対策
産後の体は、あぐらで肘をついて授乳するという動作だけで膝をゆがめるほどゆるみやすいので、普段の状態よりも正しい体の使い方が必要です。 あぐらでの肘つきなど些細なクセは、普通の状態の人の膝にとってはそこまで負担ではないかもしれませんが、産後というゆるみやすい状態ではゆがみやすくなります。 産後にかかせない授乳を正しい姿勢でおこなうには次の方法があります。- 骨盤(仙骨・坐骨)を立てて座る。 ⇒ 正しい骨盤の位置をキープする。
- そもそもあぐらで足を組んで授乳しない。